■フッ素の説明
(1)フッ素ってなぁーに?
(2)安全性について
(3)毒性について
フッ素のむし歯予防の作用機序
フッ化物の応用方法
フッ化物のむし歯予防効果
■フッ化物洗口法について
フッ化物洗口法とは何か
フッ化物洗口法のう蝕予防効果
フッ化物洗口法の必要性
■フッ化物洗口法の実施法
(1)フッ化物洗口の手順
(2)フッ化物洗口法の対象
(3)実施上の注意点

フッ化物洗口法のQ&A
【Q1】フッ化物洗口は本当に大丈夫か?
【Q2】斑状歯が発生しないか?(歯のフッ素症)
【Q3】洗口液を誤って飲み込んだ場合、大丈夫か? 
【Q4】洗口後、口の中に残るフッ素は安全か?
【Q5】フッ化物洗口液を捨てることで、環境汚染にならないか?
【Q6】ガンなど全身疾患の原因にならないか?
【Q7】6歳未満の子供にはフッ化物洗口を実施すべきではないと聞いているが?
【Q8】フッ素は劇薬であると聞いたが、使用しても大丈夫か?
【Q9】病気によってはフッ化物洗口を行ってはいけないものはあるか?
【Q10】フッ化物洗口前に、歯磨きは必要か?
【Q11】フッ化物洗口は、フッ化物配合歯磨剤、フッ化物歯面塗布と併用しても大丈夫か?
【Q12】フッ化物洗口は強制か?
【Q13】フッ素で歯が黒くなると聞いたが、本当か?
【Q14】お茶を利用してむし歯予防ができないか?
上記Q1からQ14まで、静岡県歯科医師会「フッ化物応用マニュアル」より転載
【Q15】フッ化物歯面塗布などにより、口内炎や歯肉炎が誘発されないか?
また骨の発育への悪影響が起こらないか?
【Q16】学校で養護教諭がフッ化物洗口液を作製することは違法ではないか?
【Q1】フッ化物洗口は本当に大丈夫か?
ある物質が安全か危険かを判断するときには、その「量」「使用法」を必ず考えなければなりません。
食塩は人間にとって欠く事のできない物質ですが、多く取りすぎると高血圧など成人病の原因になったり、胃ガンの発生を促進します。また、コレステロールは多くとりすぎると、動脈硬化が進行しますが、少なすぎると脳の働きが抑制されます。
普段安全だと思っている物質でも「量」、「使用法」を誤ると危険なものになります。ですから安全を考える時は「量」、「使用法」が適当であるかを判断し、上手に利用する事が賢明です。
フッ化物も適量、適正な使用法を守れば、むし歯予防に安全で効果的に利用する事が出来ます。


【Q2】斑状歯が発生しないか?(歯のフッ素症)
フッ素が原因の斑状歯は歯の形成期に、長期間過剰にフッ素を摂取した場合に生じます。 永久歯切歯の石灰化時期は生後間もなくから4〜5歳までですが、斑状歯のリスクが高いのは2〜3歳までです。フッ化物洗口法は4〜5歳児以上の吐き出しが出来る小児から実践するものでその年齢はすでにエナメル質の表面は形成が完成されており、理論的にも、実際にも、斑状歯のリスクになることはありません。 また、1回のフッ化物洗口法で(週5回法の場合)口の中に残るフッ素量は1日平均0.2mg程度ですから、これだけでは過量になる事はありません。


【Q3】洗口液を誤って飲み込んだ場合、大丈夫か?
一度に過量のフッ素を取った場合、最初に出現する症状としては、悪心、嘔吐、口渇、発汗など主に胃の刺激症状です。

体重20kgの子供の場合40mg以上を一度にとった場合にこの様な急性症状が現れます。この子供が週5回法でフッ化物洗口を行っている場合、この洗口液7ml中のフッ素量は1.6mgですから一度に約25人分の洗口液を飲み込まない限り急性中毒の心配はありません。
また体重30kgの小学生が週1回法でフッ化物洗口を行っている場合、洗口液10ml中のフッ素量は9mgですから、一度に約7人分の洗口液を飲み込まない限り急性中毒の心配はありません。


【Q4】洗口後、口の中に残るフッ素は安全か?
全く心配ありません。洗口後口の中に残るフッ素量は1日平均で約0.2mgとわずかな量です。 この量は紅茶、緑茶、ウーロン茶1〜2杯に自然に含まれている量ですから、十分に安全である事がわかります。


【Q5】フッ化物洗口液を捨てることで、環境汚染にならないか?
フッ化物は自然界に普遍的に分布している物質です。土壌には平均300ppm、海水には1.3ppmのフッ化物が天然に含有されています。 実際にフッ化物洗口を実施している小学校と中学校の総合排水口のフッ素濃度は最高でも0.2ppm程度です。この濃度の水が海水に流れても海水の濃度を高めることにはなりません。


【Q6】ガンなど全身疾患の原因にならないか?
フッ化物応用法がいろいろな疾患の原因になるかどうかを対象とした研究報告がある中で、特にガンとの関連性を調査した研究が最も多くあります。
「水道水にフッ化物が添加されている地域ではガンによる死亡率が高い。」という報告がなされた事がありましたが、その後の調査により統計処理上の誤りであることがわかりました。またフッ化物が実験用動物のガンを引き起こしたという報告もありましたがその後再検討された結果、問題がない事が明らかにされました。
米国厚生省は多くの調査文献をもとにフッ化物とガンの関連性が認められないことを発表しました。(Benefits&Risks1991) また米国国立ガン研究所をはじめとする専門機関でもフッ化物とガンの発生とは無関係であることが示されています。


【Q7】6歳未満の子供にはフッ化物洗口を実施すべきではないと聞いているが?
以前、WHO、FDIより「フッ化物洗口法は、6歳未満児には用いるべきではない。」との見解が示されました。この見解の根拠は、6歳未満の子どもは洗口液を毎回、全量飲み込む可能性があるため、1日の総フッ素量が過剰になり、歯のフッ素症発現の恐れがあるためとしています。
しかし、この見解はフロリデーション、フッ化物錠剤等のフッ化物の全身応用が行われている国々で考慮すべき問題であって、全身応用が行われていない日本には当てはまりません。わが国では、6歳未満の子どもがフッ化物洗口を開始する際、真水による練習を行い上手に洗口できるようになってから、実施しています。
日本口腔衛生学会では、「フッ化物洗口法は、就学前から小・中学校まで一貫して応用すると特に有効であり、幼児においても安全に実施する事ができる。わが国の実状に適合したフッ化物応用法としてフッ化物洗口法の普及を推奨する。」という見解を発表しています。


【Q8】フッ素は劇薬であると聞いたが、使用しても大丈夫か?
むし歯予防に用いられるフッ化物は、主にフッ化ナトリウムです。この粉末そのものは薬事法上劇薬に該当しますが、処方どおりに溶解して、その濃度がフッ素として1%以下のものは普通薬として扱われます。
したがって、学校、幼・保育園で専門家以外の人が取り扱っても問題ありません。ただし、その溶液の作製や保管に関しては十分注意する必要があります。


【Q9】病気によってはフッ化物洗口を行ってはいけないものはあるか?
身体の弱い子どもや障害者が特にフッ素の影響を受けやすいという事実はありません。むしろ、むし歯になりやすい場合が多いので積極的にフッ素を応用した方が良いと思われます。フッ素は、図のように自然界に広く存在する物質です。通常、成人で1日あたり飲食物とともに1〜3mgのフッ素を摂取しています。
そして、フッ化物洗口時に口の中に残るフッ素量は、Q4で書かれているように1日平均で約0.2mgとわずかな量です。


【Q10】フッ化物洗口前に、歯磨きは必要か?
歯磨きをしてもしなくてもむし歯予防効果はかわりません。 しかし、歯磨きは歯肉炎の予防には不可欠なのでフッ化物応用と合わせて歯科保健指導を行って下さい。


【Q11】フッ化物洗口は、フッ化物配合歯磨剤、フッ化物歯面塗布と併用しても大丈夫か?
フッ化物洗口法と、毎日のフッ素入り歯磨き剤の使用、年2〜4回程度のフッ化物歯面塗布を併用した場合、心配されるのが慢性中毒ですが、これらの方法はいずれも局所応用であり、フッ素が過剰に摂取される心配はありません。むしろフッ素入り歯磨き剤、フッ化物歯面塗布と併用することで効果が高まります。


【Q12】フッ化物洗口は強制か?
むし歯は児童の中で罹患率の高い疾病です。ですから学校等集団の場でむし歯予防に効果的なフッ化物洗口を行う事はとても重要なことです。 なるべく多くの子どもたちの参加を得るため説明会や講演会を開いて十分な理解を得た上で実施の希望をとり、希望者に対して実施します。 希望しない人については、フッ化物洗口液を利用しないで、真水で洗口するなどの対応をとっています。


【Q13】フッ素で歯が黒くなると聞いたが、本当か?
主に乳歯のむし歯を抑制する薬がフッ化ジアンミン銀で、これを塗布すると銀の働きにより歯はむし歯のところが黒くなります。フッ化ジアンミン銀は、主に歯科医院で使用されています。 ところが、むし歯予防に使用されるのはフッ化ナトリウムで、フッ化物洗口あるいはフッ化物歯面塗布で歯の色が黒くなることはありません。 両方の薬共にフッ素が入っているためにしばしば誤解されるようです。


【Q14】お茶を利用してむし歯予防ができないか?
お茶には比較的多くのフッ素が含まれています。しかしそのフッ素濃度では洗口を行ってもむし歯予防効果はほとんど期待できません。
また、毎日お茶を飲んだとしても水代わりに飲まなければ予防効果が期待できず、現実的ではありません。但し、お茶は健康のために良く、子どもたちに清涼飲料水の代わりにお茶を飲ませる事を推奨します。


【Q15】フッ化物歯面塗布などにより、口内炎や歯肉炎が誘発されないか? また骨の発育への悪影響が起こらないか?
「フッ化物歯面塗布により口内炎・歯肉炎等の症状が発生するとする報告は、承知していない。」 「むし歯予防に用いるフッ化物利用で骨等の発育に悪影響を及ぼすという報告は、承知していない。なお、微量のフッ素は骨の発育を促進するとされている。」(S60 総理大臣答弁)
福井県歯科医師会「歯科健康教室の達人」より


【Q16】学校で養護教諭がフッ化物洗口液を作製することは違法ではないか?
「養護教諭がフッ化ナトリウムを含有する医薬品をその使用方法に従い、溶解・希釈する行為は、薬事法及び薬剤師法に抵触するものではありません。」(S59 総理大臣答弁)
福井県歯科医師会「歯科健康教室の達人」より
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